はじめに
特別支援教育というのは、知識や理解がないと行うことは難しいものです。
元教員としての経験では、特に発達障害は、親御さんの理解が得られないことも多く、それが二次障害へとつながっていくことが多い印象があります。
二次障害とは、社会に対して対応できなくなる状態を言います。
例えば、「障がいを理解されず、馬鹿にされ、学校に行きたくないと不登校になる」等が挙げられます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)への支援方法
ADHDの子どもを育てる上でまず大切なことは、親がその特性を理解することです。
なぜなら、ADHDのお子さんに対しての暴力行為を行う親御さんが多いことが挙げられます。
何も知らなければ、ワガママで人の話を聞かず、何回言っても同じ間違いをする。また、すぐにカッとなって、他者を攻撃する。
そんな子どもに捉えられがちなのがADHDの子どもの特徴です。
それによって、言葉でダメなら痛みで分からせる、という考えの方も少なくないのです。
そこで、学校現場で使われる支援の具体例をご覧ください。
特に大切な部分に色を付けておきますね。
ADHDのある児童生徒には、不注意・時間や物の管理、衝動性、多動・多弁などが見られる。また、体得型の学習スタイルが特徴である。
これらの特性を踏まえ、以下のような指導をする。
・表面的な行動を叱責することなく、自信が持てるようにする。
・作業記憶が弱いため、指示は短く簡潔にする。
・フローチャートなど視覚的な情報を活用する。
・衝動性抑制のためのセルフモニタリング力を育てる。
・適切な行動をおだやかに提示する。
・注意散漫になりやすいので、不必要な掲示物を減らす。
・やる気が高まる言葉がけを行う。
・宿題や教科書・教材・プリントの管理の方法を具体的に繰り返し指導する。
・発言や移動に関して事前にルールを明確にし、適切に発言・行動できるよう支援する。
・特別支援学級在籍や通級による指導を受ける児童生徒への対応については、通常の学級と密接な連携を進める。
・本人の自尊感情に配慮した指導を行う。
・通常学級でのクラスメートに対するいじめを無くし、居場所を確保する。
・実体験を重視した指導内容を充実させる。
・2次的な障害や虐待などに応じた指導法を選択する。
文部科学省「資料5-9:注意欠陥・多動性障害に関する学校における配慮事項について」より
ADHDの子どもに対しては、なかなか身につかないですが、繰り返し教えていくことが大切です。
また、事前にルールを決めておくなど、どう動いたら良いかを教えていくことも大切です。
その他としては、ADHDの子どもは情報が多いとそわそわしだしますので、出来るだけシンプル、すっきりとした環境を作っていくことが求められます。
部屋などの環境もそうですが、指示も短く分かりやすく、1つずつ。
「食器を流しに持って行って、テーブルをふきんで拭いたら、歯磨きをしてね」ではなく、「食器を流しに持って行ってね」「テーブルをふきんで拭いてね」「歯磨きをしてね」と一つの行動ずつに区切って伝えていくほうが良いでしょう。
そして、それを当たり前になるように繰り返してしていくことで、子どもが自分でできるようになっていきます。
学校外との連携
学校外における支援についても様々な機関を活用することが考えられます。
特に一番は病院が考えられます。
しかし、「私の子どもは何も悪い所はない」と病院を受診することを否定される保護者の方もいます。
気持ちは分かります。
我が子が障がいを持っているというのは、信じたくないことですから。
しかし、障がいを親が否定するによって苦しむのが、我が子だと言うことは忘れないでいただきたいものです。
保護者のプライドによって、子どもが学校でも支援を受けられず、クラスの中で問題児扱いされて嫌われる、なんてこともあるのですから。
以下は、学校での連携の内容です。
学校に相談するだけでも、スクールカウンセラーの先生につなげてもらえることもあります。
悩んだらまずは相談を!
・医療的支援を有効に活用するための医療機関・保健所と養護教諭・コーディネーター、保護者との連携(特に薬物療法の正確な情報提供と薬物の効果測定等)を進める。
・保護者の多くは関係機関に相談に行くことに抵抗がある。関係機関と情報を共有しつつ、外部の専門家が巡回中に保護者の相談を校内で受けられる相談支援体制を整える。
・学童、民生委員、家庭相談員、児童相談所職員等親子の支援に関わる支援者が、研修を行い、虐待が起きないよう地域での理解と協力を進める。
文部科学省「資料5-9:注意欠陥・多動性障害に関する学校における配慮事項について」より
なおこちらに、薬物療法とありますが、ADHDの多動症状を抑える薬があります。
例えば、「コンサータ」などですね。
これを服用していると、学校でも落ち着いて行動できるようになる機会が増えていきます。
飲んでいる日と、飲んでいない日では子どもの様子が違いますので、とても分かりやすいです。
(しかし、これも「家では変わらないから飲ませない」という保護者の方もいらっしゃいましたね…。)
おわりに
ADHDの子どもを育てる上で大切なのは、繰り返しになりますが、保護者の方が子どもの特性を正しく理解し、理解した上で子どもの教育をしていくことです。
障がいを持つ子どもは、その良さを周りに理解されないまま責められ、苦しい思いをする人もいます。
あなたが、そんな子どもを理解し、成長を導く人になってくれることを願っております。
参考文献・サイト
- 神経発達症群における小児適応薬剤の意義とその使い方(2019)宮島 祐, 吉永 治美、脳と発達 51 巻 3 号 p. 190-192
- 文部科学省ホームページ、特別支援教育(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm)
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