不登校と発達障害の関係とは?
不登校という問題は教育の問題として、親も学校も悩むものです。
その不登校についての論文を調べてみると、研究によっては、不登校事例の 40%以上(研究によっては、57%という場合もあるが、これは検証場所によって当然数値が変わる)が発達障害であったと述べています。
このことから、発達障害と不登校には大きな関係がある場合があるということが分かるでしょう。
今回はそんな発達障害について、引用文を載せつつ、かみ砕いて説明しようと思います。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
アメオさん、注意欠陥多動性障害(ADHD)ってご存知ですか?
文字を見たら、注意力がなくて、ちょこちょこ動いちゃうって感じがしますけど、詳しくは分からないです。
そうですね。
文字からも大体推察できるのですが、よく言われるのは、少し聞いただけで分かったつもりになって行動してしまったり、周りがざわついていると落ち着いていられなくなったりすることでしょうか。
教室で急に大声で話したり、音を立てたりする子はこれにあたるかもしれません。
人物の具体例ってありませんか?
そうですね…。
ドラえもんの「のび太」は少しこのタイプに近いかもしれません。
(LDの要素も持っていそうですが…)
確かにドラえもんの話を聞かずに分かった気になって行動することが多いかも…。
障害は人それぞれ、千差万別なので本当にそうとは言えませんけどね。
ADHD では,集団における多動や衝動的な行動が目立ち,しばしば周囲から“わがまま”,集団行動に従えず,自分のペースで仕切りたがると理解されがちである.刺激の少ない狭い空間で 1 対 1 なら落ち着いているような児でも,多数の子どもたちのいる教室となると刺激は統制できず,衝動的に動いてしまう.また子どもの側では,不注意による聞き落としや聴覚把持の弱さにより,他児と一緒に聞いていることを忘れてしまったり,不注意により情報が欠落して勘違いしてしまったりすることもある.その結果,児がその場に適切なふるまいを理解できないばかりか,「自分だけ聞かされていない」,「自分はのけ者にされた」と被害的に受け取ってしまうこともある.このような失敗経験が重なると児の自尊感情が低下し,集団不適応・不登校や反社会的行動などの二次障害をきたす
学習障害(LD)
学習障害(LD)をもつ具体例として、有名どころではエジソンやアインシュタイン、トム・クルーズが挙げられるでしょうか。
すごい人ばかりですね!
LDってすごいものじゃないんですか!?
いえ、それほど甘いものではありません。
特定の分野がほとんどできない、それがLDの一つの特徴です。
特定の分野?
トム・クルーズで言えば、文字が読めないという特性がありますし、他にも算数だけがが全くできない人もいます。
特に文字の読み書きに現れやすい障がいですので、文字に触れる機会が多い日本でLDは学習に大きな差をつくっていくことになっています。
文字が上手く使えないハンディをあなたは乗り越える自信がありますか?
う…。
その苦手を何かの力で補うことができる人は良いのですが、そうでない人もいるのです。
LD は定義のうえでは,知的障害はなく特定の教科や学習能力のみが低いとされている.しかし LD の代表的な問題である読み書き障害があると,年長になるにつれて学習上の困難さが全教科に及ぶようになり,本人の努力にもかかわらず,成績がふるわない子どもになる.さらに,学習面以外に問題がないので,なおさら障害に気づかれにくく,保護者や教師から「好きな教科しか勉強しない」,「やればできるのにやらない」という目でみられてしまいがちになる.その一方で,児は自分が努力しているのにもかかわらず成績が振るわないことに周囲より先に気づき,誰にも理解されないために孤独感を味わうことになる.そして授業の内容についていけなくなると,当然のことながら学級にいること自体が苦痛となり,身体症状を訴えたり,不登校になったりする.
自閉症スペクトラム(ASD)
これが一番説明が難しいです。
どうしてですか?
スペクトラムとは、簡単に言うと、虹のように色の境目が無い状態を表します。
グラデーションと言ってもいいかもしれません。
その場所場所で色が違うように、その人によって障がいの特性や程度が変わってくるのです。
ええ!?じゃあ説明できないじゃないですか!
一応「共通しやすいこと」という意味では言えることがあります。
自分のルールがあり、こだわりが強いこと。
これによって、周りに合わせることが苦手です。
それ故に同年代の子どもからワガママやサボりという印象を持たれやすいです。
他にも、感覚過敏といった特性を持っている子もいるのが自閉症スペクトラムの特徴ですね。
ASD 児では,興味の偏り,自分のルール,こだわりなどにより他の同年齢の児と同じようにふるまうのが苦手であるとともに,合併する感覚過敏により多人数集団への適応が困難である.特に知的に遅れのない ASD 児では,自らの発達特性によるふるまいや行動を,周囲から理解されずにわがままと思われていたり,叱責の対象となっていることも少なくない.Table 1に高機能 ASD 児が不登校になりやすい理由を挙げた.これらの中で,ルールや常識,興味といった点については,家庭や学校での学習やソーシャル・スキル・トレーニングにより身に着けていくことができるが,感覚過敏については児の努力では解決できないことも多い.感覚過敏の中でも,聴覚過敏のある児では集団不適応をきたしやすい.「教室のざわざわした音が耐えられない」,「水洗トイレの流す音が怖い」,「子どもの声が痛い」などと訴えることが多々あるが,このような訴えを周囲に理解してもらえないことも少なくない.また学校の協力を求めても限界があり,耳栓などのツールを利用してもかえってからかいのもとになるなど,困難が大きい.また高機能 ASD 児の不登校は長期化することも少なくない.高機能 ASD 児では,周囲とのトラブルを発達特性にもとづく問題と理解されにくいために,教員や級友から誤解されやすく,本人には変更できない/曲げられないルールへの固執を,「人に譲らない」,「わがまま」ととらえられがちである.また何らかのトラブルがあったときに被害念慮やフラッシュバック現象を起こしやすい.これは長年暴言暴力やいじめを体験して,他者の言葉や働きかけを被害的,迫害的に読み取るようになることや,視覚的なイメージを記憶しやすいことによる
自分の子が発達障害か気になったら
もしかしたら私の子も発達障害かも…、何だか心配です…。
発達障害は人口の6.5%の割合でいると言われていますので、40人学級では2,3人いる計算になりますね。
でも、子どもが発達障害か分かるにはどうしたらいいでしょう?
方法は大きく二つあります。
一つ目は、病院の心療内科で診断してもらうこと。
小学校の特別支援教室などに入るには、病院の診断が必要です。
二つ目は、小学校の先生に相談して、スクールカウンセラーの先生につないでもらい、検査を行うこと。
病院の結果ではないので、特別支援教室に入ることはできませんが、子どもの特性を教えてくれます。
なるほど、病院か学校に相談してみるということですね。
ええ、自分の子が勉強が全然できなかったり、問題ばっかり起こすと思ったときには、相談してみるとよいと思いますよ。
障がいの特性によって、クラスに適応できていないという問題があることもありますし、その結果によって対応を変えてもらうこともできますので。
なるほど、分かりました!
おわりに
不登校を語る中で忘れてはいけないことは、決して障がいの有無が全てではないこと、一人一人に理由が違って、子どもの置かれている状況も異なるということです。
人間関係の問題だけでなく、漠然とした不安から体調不良になり、学校に行けなくなるなんてこともあります。
そんな子ども達の心的な不安、ストレスを低減することができるようになれば、学校に子どもの居場所ができやすくなるのかもしれません。
不登校の子どもに対して、家庭、地域、学校が協力して支え合える仕組みづくりが進んでいくとよいですね。
参考論文
- 子どもの心身症・不登校・集団不適応と背景にある発達障害特性(2017)石﨑 優子,心身医学,57 巻 1 号p. 39-43
- 不登校と発達障害: 不登校児の背景と転帰に関する検討(2017)鈴木 菜生, 岡山 亜貴恵, 大日向 純子, 佐々木 彰, 松本 直也, 黒田 真実, 荒木 章子, 高橋 悟, 東 寛、脳と発達,49巻 4 号 p. 255-259
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