さて、前回は貼り絵について紹介しましたが、何かを貼ったり切ったりする活動は、子どもがのりやハサミを上手に使うことができるために欠かすことはできないものです。
今回は子どもがのりやハサミを使う時、またそれを上手に使えるようになるためにはどのような過程を経ていくのかをご紹介します。
貼る力の成長
子どもが上手に物を貼るようになるためには、三つの段階があります。
まず最初にシールを貼る段階、次にのりを貼る段階、最後にテープで留める段階です。
最初のシールを貼る段階ではシールを楽しんで貼ったり、目的意識を持って飾りつけたりする活動が考えられます。
目的意識をもって飾り付けたりする活動とは何か。
それを具体的に言うと、例えば木の絵が書いてあるところにリンゴのシールを貼ったり、海の絵が書いてあるところに魚のシールを貼ったりする活動のことを言います。
それによって貼る活動を楽しむだけではなく、なぜそこに貼ろうと思ったのかを、考えながら貼ることができるようになっていきます。
のりを貼る段階では実際にのりを貼っていく中で、のりの量を調節することで、適切な量の、のりを使うことができるようになっていきます。
そこでは先ほどのシールの時に学んだ、なぜそこに貼ろうと思ったのか、その考えを生かしてシールにはない自分らしさを大切にした考えがそこに現れていきます。
最後にテープについてですが、これはのりやシールとは違って、いくつかの物をくっつけることができます。
例えば紙同士をひっつけたり紙と木をくっつけたり、貼り付ける中でも平面ではなく、立体の考えが出てくるようになります。
その立体の中には今までのシールや、のりの考えを十分に使った表現が現れていることでしょう。
切る力の成長
子どもの切る力には大きく2段階あります。
最初は、やぶる、ちぎる次にハサミで切るという段階です。
さらに細かく言うならばハサミの段階でも2段階あり、ひたすら小さく切る、そして必要な大きさに合わせて切るという段階があります。
最初は破ったり切ったりするだけで楽しんでいる子どもたちですが、やがて目的を持って自分のイメージに合わせた方法として、切る力を高めていくことができるということが明らかになっています。
それが、真っ直ぐ切る練習につながり、そして最後には、目的の形になるようになるように、紙を動かしながら切ることができるように成長していくのです。
貼ると切るの繰り返し
この貼るや切るといった活動を、子ども達が思うがままに繰り返していくことで、子ども達は楽しみながらその創造性を伸ばしていきます。
同じ貼るという経験でも、シールやのりテープといった材料が異なると、それによって生まれる経験も違います。
どのような経験をして欲しいかによって必要な材料が変わってきますので、子どもたちが取り組む場合には様々な材料用意して、材料を選択できるような環境を作っていくことが望ましいです。
しかし、なんでもかんでも与えれば良いというものでもありません、シールやのりといった経験があまりない子どもにテープを与えても十分な成長にはつながらないかもしれません。
そのため適切な時期に適切な材料を用意することが大切なのです。
おわりに
今回の内容はいかがだったでしょうか。
自分が子どもの頃シールが大好きでシールを貼りまくって親に怒られたことを思い出します。
さすがに壁に貼るのは良くはないと思いますが、子どもが自由に考えて自由に作ってみる、そんな環境を用意することは、子どもの独創性を高める上で効果的かもしれませんね。
私の親はベニヤ板を1枚用意して、ここに自由に貼るように、としていたことを思い出します。
シールだらけでボロボロになった板、それが記憶に残っているということは、きっとシールを貼って遊ぶ活動はとても楽しいものだったのでしょうね。
参考論文
幼児の造形表現行為の変容過程に関する実践的研究 : 3歳児の「貼る」「切る」に着目して(2017)上田 敏丈、川喜田 奈保、人間文化研究28、155 – 169
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