不登校の子どもたちや、学校への参加する意欲が低い子どもの中には、「自分ではできない」と感じることが多い子も少なくありません。
この思い込みが強く、根深いものになると、挑戦すること自体を避けてしまい、今まで以上に自信を失っていくことがあります。
しかし、この「できない」という思い込みを乗り越えることさえできれば、子どもは挑戦しようという気持ちを持つことができますし、それによって自分の新たな可能性に気づくことにもつながっていくのです。
この記事では、その思い込みを乗り越えるための取り組み方について、話をしていきます。
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1. 思い込みを認識し、理解する
まず、「自分ではできない」という思い込みがどこから来るのかを理解することが大切です。
思い込みは、過去の失敗体験や周囲の期待に対するプレッシャー、または他の人との比較から生まれることが多いのですが、子どもがなぜ「できない」と感じるのか、その理由を一緒に考えることで解決の糸口が見つかる場合があります。
算数への苦手意識を持つAさんを例に①
算数の学習で問題を解く時間になった途端、机に突っ伏してしまったAさん。
理由を聞くと「どうせできんもん」「分からん」ということを話してくれました。
さらに話を聞いてみると、問題の見方や、解くための手順が分かっていなかったようです。
そこで、「じゃあ、一緒に解いてみよう」と一緒に問題を見てみることにしました。
この段階で重要なのは、「できない」という感情を否定せず、その感情をしっかりと受け止めることです。子どもの気持ちを受け止め、なぜ「できない」と感じるのかを一緒に探ることが、次のステップへ繋がります。
2. 小さな成功を積み重ねる
「できない」という思い込みを乗り越えるためには、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。子どもが達成可能な目標を設定し、それをクリアすることで、自己肯定感を少しずつ高めることができます。最初は簡単な目標から始め、成功体験を得ることで、「自分にもできる」と感じることができるようになります。
算数への苦手意識を持つAさんを例に②
最初は教師がえんぴつを持ち、問題を解きながら問題で見るポイントや考え方を説明しました。
次に、Aさんにえんぴつを持たせ、同じ順番で取り組ませました。当然一度ですべては覚えきれないので、止まるたびにヒントや説明を加えました。
そして、次の問題は「最初に何をするんだっけ?」「その次は?」と手順を確認しながらAさんに取り組ませ、同じようにヒントや説明を加えました。
「次の問題は自分でチャレンジしてみよう。分からなかったら教えて」と指示を出し、私はAさんの手元が見えるけれども近すぎないところまで離れました。
※教える際に使った肯定的な言葉「そうそう」「いいじゃん」「やるね」「ナイス」など
苦手なことに対しては小さな目標を設定して一つずつクリアしていきましょう。その過程で子どもが「できるかも?」と思えるようにするところから始め、最終的に「できた!」という達成感を感じることができれば、次の挑戦にも前向きに取り組めるようになります。
3. 失敗を成長の一部として受け入れる
「できない」と感じる多くの子どもは、失敗を恐れて挑戦を避けがちです。
しかし、「失敗は成長のために必要なものだ」と子どもが受け入れることができれば、挑戦する勇気に変えることができるでしょう。
失敗はみんながすること、失敗することでその人の価値が下がるようなこともありません。
むしろ、失敗から学び、次に活かすことを学ぶことで成長に繋がっていくのです。
算数への苦手意識を持つAさんを例に③
Aさんが問題を解き終えたのを確認したら、近づき、回答を見てみました。
そこには誤答が書かれてあります。どうやら、途中で飛ばしてしまった過程があるようです。
Aさんの表情も不安げです。
「じゃあ確認をしていこう。最初は○○をするんだったね。OK、ばっちり」
「次は△△をするんだったね。」「あっ!」
「何かに気づいたの?じゃあ、やってごらん」
Aさんは消しゴムを手に、ノートの文字を消し始めました。
他にも、テストで思うような結果が出なかったとき、単に「できなかった」と終わらせるのではなく、「どうしてうまくいかなかったのか」「次はどのように改善すれば良いか」を一緒に考えることが大切です。
やり方を知り、失敗を恐れずに挑戦できるようになることで、子どもは新たなスキルを身につけることができます。
4. 親や支援者のサポートを活用する
上記のAさんの例以外でも子どもが「できない」と感じる場面で、親や教師など支援する人がどれだけサポートできるかは非常に重要な課題です。
細やかな励ましや具体的なアドバイスによって、子どもは少しずつ自信を持つことができます。
その過程では誰かに助けてもらうことは悪い事ではなく、成長するために必要なものであることを理解させることも大切です。
たとえば、ある課題に取り組む際に、子どもが分からないことを相談できる、確認できる環境を作ることや、一緒に問題を解決することも効果的です。
親、教師、友達などからうける「大丈夫、君ならできるよ」という励ましは、子どもの背中を押してくれるでしょう。
また、具体的なアドバイスや手助けを行い、必要に応じてカウンセラー等による専門的な支援を受けることも一つの方法です。
5. モチベーションを維持する方法
モチベーションを維持するためには、短期的な成果に焦点を当てることが効果的です。
目の前の小さな成功を喜び、次のステップへと進んでいくことで、子どもは「できるかもしれない」と感じ続けることができます。
また、他の子どもと比べず、自分のペースで進むことを大切にすることで、プレッシャーを感じずに挑戦を続けられます。
算数への苦手意識を持つAさんを例に④
そして、そこから適切な方法で問題を解くことができました。
私は黙って丸をつけました。
その時の表情には少し驚いたような「できた」という顔が浮かんでいました。
「次もやってみようか」
「うん!」
Aさんは次の問題に一人で挑戦を始めたのです。
子どもは良く「他の子と比べてダメだ」と感じてしまうことがありますが、誰かとの比較ではなく自分の成長に焦点を当てることを身に着けていくことで、自信を持ちながら次に進むことができます。
毎日の少しの成長を喜び、認め、励まし、モチベーションを高めていきましょう。
おわりに
今回は学校現場でよく起こる、勉強に対する苦手意識からくる自身の喪失を例に話をしていきました。
今回のA児のみならず、子どもの持つ課題はさまざまで、「何だかよく分からないけど…」と本人が自覚していないけれども自身がないという事例もあります。
その一人ひとりについて教師や親、周囲のサポートをしてくれる人たちで努力を認めていくこと、そして子どもが小さな成功体験を積み重ねるサポートをすることで、子どもは前向きに自分を受け入れられるようになっていくでしょう。
しかし、積み重ねていくためには毎日毎日の関わり方が大切になっていきます。
子どもの困っている事に気づいてあげること、そしてその困りに対してスモールステップで対処法を伝え、教え、導ける、そんな関わり方をしていけると良いですね。
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