不登校に限らず、学校に通っている子どもたちの中にも「自己肯定感の低さ」が潜んでいることによって、多くの課題と出会うことがあります。
学校に行けない自分を責めたり、他の子どもと自分を比べてしまうことが原因で、自信を失いがちになってしまったり、「どうせ自分にはできない!」と挑戦することなく行動自体をやめてしまうことがよくあります。
この「どうせ」という言葉が、寂しいですよね。
今まで何度も挑戦してきたけれども、それでもできなかったことを言っている訳ですから。
私も不登校時代は自信がなく、自分ではあまり行動できないタイプだったことを思いだします。
逆に言えば、この自分に対する自信を培っていくことは、不登校解消につながる一つの道になることでしょう。
では、そんな子どもに対してどのように関わっていったらよいでしょうか?
今回は、そんな「自信」こと「自己肯定感」を高めるための学校や家庭での具体的な取り組みについて話をしていきます。
自己肯定感が低い子どもの特徴
自己肯定感が低い子どもは、自分の価値を感じにくく、「どうせ自分なんて」といった否定的な思考にとらわれがちです。
具体的には以下のような特徴が見られることがあります。
- 他の人と自分を比較して落ち込む
- 小さな失敗でも大きく自分を責める
- 新しいことに挑戦することを極端に恐れる
- 周囲の目を気にしすぎて行動が制限される
これらの特徴を放置していると、自己肯定感の低さによって行動ができない、行動してもうまく行かず自分を責める、そしてさらに行動できなくなるといった悪循環を生み、不登校が長期化する可能性があります。
だからこそ、早い段階で自己肯定感を育てる環境を作っていくことが大切です。
家庭での関わり編
子どもの生活の中心である家庭。
この家庭が子どもたちにとって安心できる場所であるというのはとても大切です。
認めてもらいたい、分かってもらいたい
家庭というのは、子どもにとって安心できる場所であり、自分の心と体を守ってくれる安全地帯でもあります。
子どもは家族に対して「今の自分のことを受け入れてほしい」、「今の自分でも認めてほしい」といった気持ちがあるのです。
ですが、親もまた人。
子どもを心配に思うあまり、「どうして行かないんだ!」「子育ての何かが悪かった?」と色々と考えてなんとか登校させようとする、そんな毎日になってしまうこともあるでしょう。
しかし、ここで、あえて立ち止まってもう一度振り返りましょう。
不登校や行き渋りの子どもは、「自分のことを認めて欲しがっている」ことを。
果たして、認めているという気持ちをどれだけ子どもに伝えられているでしょうか?
伝えるためには「ほめること」
その認めているという気持ちを伝えるために大切なのは「心からほめること」です。
ただの「ほめる」ではありません。
「『心から』ほめる」ことが大切なのです。
家でやってほしいのは子どものどんなところが素晴らしいのか、良さを認めてあげること。
例えば、「手伝ってくれてありがとう。〇〇は優しいね。」「〇〇ができるってすごいじゃん!才能あるよ!」「学校行ってないのに、この問題が解けるってすごくない!?」などが考えられます。
これらを心から思ったものを行うのですが、
家庭では、子どもの持っている力や資質(才能)について認めてあげることがよいでしょう。
不登校が続いて、家に子どもとずっといると、つい悪いところに目が向きがちになりますので、ほめるのを見つけるのも大変かもしれません。
しかし、自己肯定感を高めるためには、誰かから認められることが必要です。
スクールカウンセラーであり、大学准教授である森田直樹さんの出された不登校解消の本「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」によると「一日3回、まずは三週間。毎日ほめましょう。子どもが学校で使ってしまって、今は空になっている心のエネルギーを親が注いであげるのです。毎日続けていくと子どもは変わってきます」という話が書かれていました。
毎日褒めることは大変です。
些細なことから、それこそ「足音」からでも見つけようと努力することが大切になってくるでしょう。
その子どもを認め続け、心に自信の基礎となる言葉をかけ続けることが、自己肯定感を高めることへと繋がっていくのです。
学校での関わり編
学校ではできないことが子どもにとっての大きな負担になります。
「周りの子はできているのに私だけできない」と周りと比較しやすい環境だからです。
不登校になる子、行き渋りのある子など、誰もが「できるようになりたい」という思いを持っています。
教師はその思いを受け止め、実現できるような工夫が必要になってきます。
家庭とは違う「ほめる」活動を
学校の「ほめる」活動は家庭のものとは異なります。
それは、子どもの持つ力ではなく、行動した過程をほめること。
例えば、授業中での「ここまで自分でできたんだね。いいね!」「練習した成果が出てるよ!やったね!」「最後まで頑張ったね!偉い!」「ここは、こんな工夫をしたんだね。素敵!」といった声かけになるでしょう。
行動を前向きなものにするためには、挑戦したことについてポジティブに捉えることが必要不可欠です。
できた、できなかった、だけでは子どもにとって認められていないと感じることも出てくることでしょう。
そうではなく、教師は全員をほめるつもりで、子どもたちの行動を見ていく必要があるのです。
授業計画の工夫を
子どもたちを全員ほめるための教員にとっての一番の道は授業改善です。
子どもの「勉強したい!」「分かった!」を生み出すためには、授業の内容を変えていくことが求められます。
先ほど挙げた、ほめるという活動についても意図的にほめる場についても設定しておくことで、機会をつくることができるでしょう。
例えば私の場合は、
- 前回の授業を思い出す際に「お、しっかり覚えてたね」「ノートを見返した。いいね!」
- 予想を立てる時に「そういう経験を活かしたんだ!なるほど!」
- 問題を解く時に「ここまでできたんだね。いいよ!ここまでバッチリ!」
- 授業の終わりに「今日も頑張ったね!」
など、認めたり、ほめたりする場面をあえて仕組んでいます。
ほめられて嫌な子どもはいません。
しかも、ちゃんと心からほめられたものなら尚更です。
叱ってばかりにならないように、ほめる:叱る=9:1くらいの比率を目指して取り組んでみましょう。
おわりに
子どもの自己肯定感を育むことは、不登校の解決に向けた大きな一歩です。
親や周囲の大人が、子どもの努力や個性を認め、小さな成功体験を積み重ねるサポートをすることで、子どもは前向きに自分を受け入れられるようになります。
それは、小さなことかもしれません。
しかし、積み重ねていくためには毎日毎日の関わり方が大切になっていきます。
子どもに全てを任せてそのままではなく、「ちゃんと見ているよ」「認めているよ」そんなメッセージが届くような関わり方をしていけると良いですね。
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